下では、上《かみ》と下《しも》とに水を分かつ地点となってる一塊の土壌で、大溝渠からへだてられている。もしジャン・ヴァルジャンが隧道《すいどう》を上っていったならば、限りない努力を重ねた後、まったく疲れきり、息も絶えだえになって、暗黒の中で一つの壁につき当たったであろう。そして彼はもう万事休したに違いない。
 なお厳密に言えば、その行き止まりから少しあとに引き返し、ブーシュラー四つ辻《つじ》の地下の輻湊点《ふくそうてん》にも迷わないで、フィーユ・デュ・カルヴェールの隧道にはいり、次に左手のサン・ジルの排水道にはいり、次に右に曲がり、サン・セバスティヤンの隧道を避ければ、アムロー下水道に出られ、それから更に、バスティーユの下にあるF字形の隧道に迷いこまなければ、造兵廠《ぞうへいしょう》の近くのセーヌ川への出口に達するのだった。しかしそれには、巨大な石蚕《せきさん》のような下水道をよく知りつくし、あらゆる枝と穴とを知っていなければならなかったろう。しかるに、なおことわっておくが、彼は自らたどってるその恐るべき道筋について何らの知識をも持っていなかった。もしどういう所にいるかと人に尋ねられたと
前へ 次へ
全618ページ中249ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング