に老年におよんでもほとんど減じてはいなかったが、それでも今や弱り始めてきた。疲労は襲ってき、そのために力は少なくなり、背の荷物はしだいに重さを増してきた。マリユスはもう死んでるのかも知れないと思われた。命のない身体のようにずっしりした重さがあった。ジャン・ヴァルジャンはその胸をなるべく押さえないように、またその呼吸がなるべく自由に通うようなふうに、彼をになっていた。足の間には鼠《ねずみ》がすばやく逃げてゆくのを感じた。中には狼狽《ろうばい》の余り彼に噛《か》みついたのがあった。時々下水道の口のすき間から新しい空気が少し流れ込んできたので、彼はまた元気になることもあった。
 彼が囲繞溝渠《いじょうこうきょ》に達したのは、午後三時ごろであったろう。
 最初に彼は突然広くなったのに驚いた。両手を伸ばしても両方の壁に届かず頭も上の丸天井に届かないほどの広い隧道《すいどう》に、にわかに出たのだった。実際その大溝渠は、広さ八尺あり高さは七尺ある。
 モンマルトル下水道が大溝渠に合してる所には、他の二つの隧道、すなわちプロヴァンス街のそれと屠獣所のそれとが落ち合って、四つ辻《つじ》を作っている。ごく
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