し》にも壁にも傷痕《しょうこん》がつき、恐怖すべき姿で横たわっている、そういうのがパリーの昔の下水道をふり返って見たありさまだった。四方への分岐、塹壕《ざんごう》の交差、枝の形、鴨足《かもあし》の形、坑道の中にあるような亀裂、盲腸、行き止まり、腐蝕した丸天井、臭い水たまり、四壁には湿疹《しっしん》のような滲出物《しんしゅつぶつ》、天井からたれる水滴、暗黒、実にバビロンの町の胃腸であり、洞窟《どうくつ》であり、墓穴であり、街路が穿《うが》たれている深淵《しんえん》であり、かつては華麗であった醜汚の中に、過去と称する盲目の巨大な土竜《もぐら》が彷徨《ほうこう》するのが暗黒の中に透かし見らるる、広大なる土竜《もぐら》の穴であって、その古い吐出口の墓窟のごとき恐ろしさに匹敵するものは何もない。
繰り返して言うが、そういうのがすなわち過去[#「過去」に傍点]の下水道であった。
五 現在の進歩
今日では、下水道は清潔で、冷ややかで、まっすぐで、規則正しい。イギリスにてレスペクタブル([#ここから割り注]りっぱな[#ここで割り注終わり])という言葉が含む意味の理想的なものを、ほとん
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