機官の帽をかぶった豚がついており、他の面には、法王の冠をかぶった狼がついていた。
大溝渠《だいこうきょ》の入り口の所で、最も意外なものに人々は出会った。その入り口は、昔は鉄格子《てつごうし》で閉ざされていたのであるが、もう肱金《ひじがね》しか残っていなかった。ところがその肱金の一つに、形もわからないよごれた布が下がっていた。おそらく流れてゆく途中でそこに引っかかって、やみの中に漂い、そのまま裂けてしまったものだろう。ブリュヌゾーは角燈をさしつけて、そのぼろを調べていた。バチスト織りの精巧な麻布で、いくらか裂け方の少ない片すみに、冠の紋章がついていて、その上に LAUBESP という七文字が刺繍《ししゅう》してあった。冠は侯爵の冠章だった。七文字は Laubespine([#ここから割り注]ローベスピーヌ[#ここで割り注終わり])という女名の略字だった。一同は眼前のその布片がマラーの柩布《ひつぎぎれ》の一片であることを見て取った。マラーには青年時代に情事があった。それは獣医としてアルトア伯爵の家に寄寓《きぐう》していた頃のことである。歴史的に証明されてるある一貴婦人との情事から、右の敷
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