は、死人の頭が彼らをながめていた。
 しかしアンジョーラとマリユスと七、八人の者は、彼らのまわりに列を作り、挺身《ていしん》して彼らを保護していた。アンジョーラは兵士らに叫んだ、「出て来るな!」そして一将校がその言に従わなかったので、アンジョーラはその将校を仆《たお》してしまった。彼は今や角面堡の内部の小さな中庭で、コラント亭を背にし、一方の手に剣を握り、一方の手にカラビン銃を取り、襲撃者らを食い止めながら、居酒屋の戸を開いていた。彼は絶望の人々に叫んだ。「開いてる戸は一つきりだ、こればかりだ。」そして身をもって彼らをおおい、ひとりで一隊の軍勢に立ち向かいながら、背後から彼らを通さした。彼らは皆そこに走り込んだ。アンジョーラはカラビン銃を杖《つえ》のように振り回し、棒術でいわゆる隠れ薔薇《ばら》と称する使い方をして、左右と前とに差しつけられる銃剣を打ち落とし、そして最後にはいった。兵士らは続いて侵入せんとし、暴徒らは戸を閉ざさんとし、一瞬間恐ろしい光景を呈した。戸は非常な勢いで閉ざされて戸口の中に嵌《はま》り込みながら、しがみついていた一兵士の五本の指を切り取り、そのままそれを戸の縁に
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