ったその男に違いないのだろうか。テナルディエとて思い違いをすることもあるだろう。すべて解く術《すべ》もない問題ばかりだった。しかしそれにもかかわらず、リュクサンブールの園の若い娘は少しもその天使のごとき美しさを失わなかったことだけは、真実だった。実に痛心のきわみである。マリユスは心のうちに情熱をいだき、目には暗夜をながめていた。彼は押し放されまた引きつけられて、身動きもできなかった。愛を除いてはすべてが消えうせてしまった。しかも愛そのものについてさえ、彼は衝動と激しい光耀《こうよう》とを失っていた。われわれを燃やす愛の炎は、普通ならばまた多少われわれを輝かし、外部にも何らか有用な光をわれわれに投げ与えるものである。しかしそれらひそかな情熱の助言をも、マリユスはもはや耳にすることができなかった。「あすこへ行ってみたら」とか、「こうやってみたら」とかいうことを、彼はもう決して考えなかった。もはやユルスュールと呼べなくなった娘も、どこかにいることだけは明らかだったが、どの方面をさがしたらよいかはまったくわからなかった。今や彼の生涯は次の一語につくされていた、見透かし難い靄《もや》の中における
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