察の方では立ち聞きをしながら、もはや居酒屋の中ばかりではなく、往来ででも奇怪な対話を聞き取った。
「早く入れてもらえよ。」とひとりの織り物工が指物師《さしものし》に言った。
「なぜだい。」
「もうすぐに鉄砲を打たなきゃならねえからさ。」
 ぼろをまとったふたりの通行人が、明らかにジャックリー([#ここから割り注]訳者注 百姓一揆[#ここで割り注終わり])めいた粗雑な注意すべき言葉をかわした。
「俺たちを治めてるなあだれだと思う?」
「フィリップさんさ。」
「いや、中流民たちだ。」
 われわれがここにジャックリー[#「ジャックリー」に傍点]という言葉を悪い意味に取ってると思ってはまちがいである。ジャックリーの者らはすなわち貧しい者らである。しかるに飢えてる者らは権利を持っている。
 またある時は、ふたりの通行人のひとりがもひとりのに言っていた、「攻撃のうまい計画ができてるんだ。」
 トローヌ市門の広場の溝《みぞ》の中にうずくまってた四人の男の親しい会話から、次の言葉だけが聞き取られた。
「これからあれがパリーの中をうろつき回らねえようにするため、できるだけのことがされるんだ。」
 あれ[
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