ヲた。
「心から慕ってるの。」
彼は言葉につくし難い愛撫《あいぶ》の調子で言った。
「泣いちゃいや。ねえ、私のためにどうか泣かないでね。」
「あなたは私を愛して下すって?」と彼女は言った。
彼は彼女の手を取った。
「コゼット、私はだれにもまだ誓いの言葉を言ったことはない。誓いの言葉は恐ろしいから。私はいつも父が自分のそばに立ってるような気がする。でも私は今一番神聖な誓いの言葉をあなたに言おう。ねえ、あなたが私のもとを去れば、私は死んでしまう。」
彼がその言葉を発した調子のうちには、きわめて荘重な静粛な憂愁がこもっていて、コゼットは身をおののかした。悲痛な真実なものが通りかかる時に与える一種の冷気を、彼女は感じた。そしてその感動を受けて泣くのをやめた。
「あのね、」と彼は言った、「明日《あした》は私を待たないんだよ。」
「なぜ?」
「明後日《あさって》でなければこないつもりでね。」
「まあ、なぜ?」
「あとでわかるよ。」
「一日あなたに会わずに! いえそんなことできないわ。」
「あるいは一生のためになることだから、一日くらい耐《こら》えていよう。」
そしてマリユスは、半ば口の中で
前へ
次へ
全722ページ中436ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング