題目においては労力の使用が問題である。
 第二の題目においては享有の分配が問題である。
 労力の適宜なる使用から、公衆の勢力が生じてくる。
 享有の適宜なる分配から、個人の幸福が生じてくる。
 適宜なる分配とは、平等なる分配の謂《いい》ではなくて、公平なる分配の謂である。最上の平等とはすなわち公平のことである。
 外に現われては公衆の勢力と、内にあっては個人の幸福と、その二つが結びつく時に、社会の繁栄が生じてくる。
 社会の繁栄とは、幸福なる人間、自由なる公民、偉大なる国民、をさす言葉である。
 イギリスは右の二つの題目のうち第一だけを解決している。巧みに富を作ってはいるが、その分配は適宜でない。ただ一方だけが完成したにすぎないその解決は、イギリスを必然に二つの極端に導いている、すなわち、恐るべき富裕と恐るべき困窮とに。ある者らにはあらゆる享有、他の者らすなわち民衆にはあらゆる欠乏。特権、除外例、独占、封建制、などは労働からも生ずる。それは誤れる危険な状態であって、個々の困苦の上に公衆の勢力をうち立て、個人の苦悩のうちに国家の偉大さの根を置くものである。それは不完全に組み立てられた偉大
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