ェこれをうっちゃるなあ惜しいな。女がふたりで、後ろの中庭に爺《じい》さんがいるだけだ。窓の布《きれ》も悪かあねえ。爺さんは猶太人《ジュウ》かも知れねえ。うめえ仕事だと思うがな。」
「よし、お前たちははいれ。」とモンパルナスは叫んだ。「やっつけろ。俺《おれ》はここに娘といっしょに残ってらあ。もしあいつが何かしたら……。」
 彼は袖《そで》のうちに持っていた開いたナイフを、街灯の光にひらめかした。
 テナルディエは一言も口をきかずに、何でも皆の言うとおりに従おうとしてるようだった。
 いつも有力な発言者であり、また読者の知るとおり「事件を仕組んだ」発頭人であるブリュジョンは、まだ口を開かなかった。彼は考え込んでるらしかった。彼はいかなることにも逡巡《しりごみ》しないという評判を取っており、また、単に勇気を誇示せんがためのみではあったが、ある時警察署から物を盗んだということも、皆に知られていた。その上彼は、詩を作り、歌をこしらえ、いたく重んぜられていた。
 バベは彼に尋ねた。
「お前は何とも言わねえのか、ブリュジョン。」
 ブリュジョンはなおしばらく黙っていたが、それから種々なふうに何度も頭
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