チたくなかった。ただ、コゼットと親しい調子になってる今では、エポニーヌに対してよそよそしい調子を取らざるを得ないような気がしたまでである。
彼が黙っているので、彼女は叫んだ。
「何なの……。」
そして彼女は言葉を切った。以前はあれほどむとんちゃくで厚かましかった彼女も、今は口をききかねてるらしかった。彼女はほほえもうとしたが、それもできなかった。彼女はまた言った。
「なーに?……。」
そう言いかけて彼女はまた口をつぐみ、目を伏せてしまった。
「さようなら、マリユスさん。」とだしぬけに彼女は言って、向こうに立ち去ってしまった。
四 隠語を解する番犬
その翌日の六月三日、重大なる事変が電気を含んだ暗雲の状態になってパリーの地平線にかかっていたために記憶すべき一八三二年の六月三日、マリユスは夜になる頃、心にいつもの楽しい考えをいだいて、前日と同じ道をたどっていた。その時彼は、大通りの並み木の間に、こちらへやって来るエポニーヌの姿を認めた。二日続くとはあまりのことであった。彼は急いで横にはずれ、大通りを去り、道筋を変えて、ムッシュー街からプリューメ街へ行った。
そのため
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