轤ネいものであるという証拠である。
マリユスにとっては、コゼットが化粧品の話をするのに耳を傾けること。
コゼットにとっては、マリユスが政治を語るのに耳を傾けること。
膝《ひざ》と膝とを接してすわりながら、バビローヌ街を行く馬車の音を聞くこと。
大空のうちに同じ星をながめ、または草の中に同じ螢《ほたる》をながめること。
いっしょに黙っていること。これは語るよりも更に楽しいことである。
その他種々。
そのうちに種々複雑なことが到来してきた。
ある晩、マリユスは会合の場所に行くためにアンヴァリード大通りを通っていた。彼はいつも首垂《うなだ》れて歩くのが癖であった。彼がプリューメ街の角《かど》を曲がろうとした時、すぐそばに声がした。
「今晩は、マリユスさん。」
頭を上げると、それはエポニーヌであった。
その遭遇は彼に妙な気持ちを与えた。その娘からプリューメ街に連れてこられた日以来、彼は一度も彼女のことを考えたことがなく、姿を見たこともなく、まったく頭の外に追い出してしまっていた。彼女に対して彼はただ感謝のほかはなく、現在の幸福は彼女に負うところのものであった。けれども彼は、
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