その上国外に対しては、一八三〇年はもはや革命ではなく王政となったために、全ヨーロッパと歩調を合わせなければならなかった。平和を保全することはいっそうの複雑さをきたすことである。矛盾せるものと調和を保たんとすることは、それと戦うよりもいっそうの厄介事であることが多い。常に嵌口《かんこう》されながら常に囂々《ごうごう》たるその暗黙の闘争から、武装せる平和が、本来既に疑わしい文明の更に自ら身をそこなうべき術数が、生まれたのである。七月の王位は、ヨーロッパの各政府に繋駕《けいが》されながら後足で立ち上がってたけり立った。メッテルニッヒは進んでこの王位に臀革《しりかわ》を施さんとした。フランスにおいては進歩から鞭《むち》打たれたこの王位は、全ヨーロッパにおいては足の緩《ゆる》い各王政を鞭《むち》打った。自ら駆り立てられてまた他を駆り立てんとした。
 そのうちにも国内においては、恐るべき斜面があった。困窮者、下層民、賃金、教育、刑罰、醜業、婦人の地位、富、貧、生産、消費、分配、交易、貨幣、信用、資本家の権利、労働者の権利、すべてそれらの問題が社会の上に輻湊《ふくそう》していた。
 本来の政治
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