、二斤の黒パンと、一瓶《ひとびん》の水と、数粒の豆が浮いてる貧しい一皿の汁《しる》とを、寝台のそばに置き、彼の鉄枷《てつかせ》を調べ、鉄格子《てつごうし》をたたいて検査した。番犬をつれたその男は夜は二回見回ってきた。
 テナルディエは一種の鉄の楔《くさび》を持つことを許されていた。それで彼は壁の割れ目にパンをおし込んでいたが、自ら言うところによれば、「鼠《ねずみ》に取られないようにするため」だった。見張りをしてる間は、彼がその鉄の楔を持ってても別に不都合らしくは思えなかった。けれども後になってひとりの看守の言葉が思い合わされた。「木の楔を持たした方がいいだろう。」
 さてその夜、午前二時に、番兵が交代になって、老兵士だったのが新兵に代わった。それから間もなく、犬を連れた男が見回ってきたが、番兵がごく年少で「徒歩兵」特有の「田舎者《いなかもの》らしい様子」をしてることのほか、何ら異常を認めないで立ち去った。そして二時間後、四時に、交代の時になると、その新兵はぐっすり眠っていて、テナルディエの檻のそばに丸太のようにころがっていた。テナルディエの方はもうそこにいなかった。こわれた鉄の枷が床石
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