た。庭は周囲に人家の立ち並ぶのを待ってるかのように、舗石《しきいし》もない寂しい小路に接し灌木《かんぼく》でとりまかれていた。ただ生籬《いけがき》一重でへだてられてるばかりだった。
ガヴローシュはその庭の方へ進んでいった。彼はその小路を見つけ林檎の木を認め、果物小屋を見定め、生籬を調べてみた。ただ一またぎで越えられる生籬だった。日は暮れかかってい、小路には猫《ねこ》の子一匹おらず、ちょうどいい時機だった。ガヴローシュは籬《まがき》を乗り越そうとしたが、突然それをやめた。庭の中に話し声がしていたのである。ガヴローシュは籬のすき間からのぞいた。
彼から二歩の所、籬の内側に、ちょうど彼がすき間から入りこもうと思ってた所に、ベンチのようなふうに石をねかしてあって、石の上に例の爺《じい》さんが腰掛けており、前には婆さんが立っていた。婆さんは何かぶつぶつ言っていた。不遠慮なガヴローシュはそれに耳を傾けた。
「マブーフ様!」と婆さんは言った。
「マブーフ、おかしな名前だな、」とガヴローシュは思った。
爺さんの方はそう呼びかけられても身動きもしなかった。婆さんは繰り返した。
「マブーフ様!」
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