忌すべきものである。
 この正義と事実との争いは、社会の初めより続いている。その闘争を絶滅せしめ、純なる観念と人間の現実とを混合せしめ、穏かに正義を事実のうちに浸透せしめ事実を正義のうちに浸透せしむること、それこそまさしく賢者の仕事である。

     二 悪き縫合

 しかしながら、賢者の仕事があるとともにまた巧者の仕事がある。
 一八三〇年の革命は早くその歩を止めた。
 革命が擱坐《かくざ》するや、巧者らはその蹉跌《さてつ》を寸断する。
 巧者らは十九世紀においては、自ら為政家という称号を取った。かくてこの為政家なる言葉は、ついに多少隠語の趣を有するに至った。実際人の知るとおり、巧妙のみしか存しないところには必然に卑小が存する。「巧者」というは「凡人」というに等しくなる。
 同様にまた、「為政家」というは時として「反逆人」というに等しい。
 それゆえに巧者らの言うところによれば、七月革命のごとき革命は、断ち切られたる動脈であって、すみやかに縫合するを要する。あまりに堂々と宣言されたる正義は他を動揺させる。ゆえに一度正義が確認さるるや、こんどは国家を再び固むるを要する。自由が確保さる
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