A向こうが帽子をかぶっていないのを見て、安心の念を起こした。
「なるほど、」と彼は言った、「では街灯をこわさせないためでもねえんだな。」
「何でもこわすがいいよ。」
「お前はりっぱな男だ。」とガヴローシュは言った。
そして彼は五フラン貨幣をポケットに入れた。
彼はますます安心して言い出した。
「お前はこの街路の人かい。」
「そうだよ。なぜ?」
「七番地ってのはどこだか教えてくれないか。」
「七番地に何の用があるのかね。」
そこで少年は口をつぐんだ。あまり言いすぎはしなかったかと恐れた。彼は頭を爪《つめ》の先でがりがりかいて、ただこう答えた。
「ああここか。」
ある考えがジャン・ヴァルジャンの頭に浮かんだ。心痛にもそういう明察がある。彼は少年に言った。
「お前さんは、私が待ってる手紙を持ってきたのではないのか。」
「お前が?」とガヴローシュは言った。「お前は女じゃねえや。」
「手紙はコゼット嬢へというのではないのか。」
「コゼット?」とガヴローシュはつぶやいた。「うむ、何でもそんな名だった。」
「では、」とジャン・ヴァルジャンは言った、「私がその手紙を届ける役目だ。私にくれ。」
「それじゃ、俺《おれ》が防寨《ぼうさい》からきたことをお前は知ってるわけだな。」
「知ってるとも。」とジャン・ヴァルジャンは言った。
ガヴローシュは貨幣を入れたのと別なポケットに手を差し込み、四つに折った紙を引き出した。
それから彼は挙手の礼をした。
「大事な使いだ。」と彼は言った。「仮政府からきた使いだ。」
「渡してくれ。」とジャン・ヴァルジャンは言った。
ガヴローシュは頭の上に紙をささげた。
「恋文だと思っちゃいけねえ。あて名は女だが、実は人民へあてたものだ。俺《おれ》たち男どもは戦いをしてるが、婦人は尊敬する。女を食い物にする獅子《しし》のような奴《やつ》がいる上流とはわけが違うんだ。」
「渡してくれ。」
「つまり、」とガヴローシュは言い続けた、「お前はりっぱな男だと俺は思うんだ。」
「早く渡せ。」
「さあ。」
そして彼はジャン・ヴァルジャンに紙を渡した。
「急ぐんだぜ、爺さん、嬢さんが待ってるからな。」
ガヴローシュはかく爺《じい》さん嬢さんと語呂《ごろ》を重ねたのに自ら満足した。
ジャン・ヴァルジャンは言った。
「返事はサン・メーリーへ届けるのかね。」
「そんなこ
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