\歳の青年は、太い頑丈《がんじょう》な人夫を一枝の葦《あし》のようにへし折って、泥の中にひざまずかした。ル・カブュクは抵抗しようとしたが、あたかも人力以上の手につかまれてるがようでどうにもできなかった。
その時、色を変え首をあらわにし髪をふり乱してるアンジョーラには、その女のような顔つきをもってして、何となく古《いにしえ》のテミス([#ここから割り注]訳者注 正義の女神[#ここで割り注終わり])のような趣があった。彼のふくらした小鼻、伏せた目は、そのギリシャ式の厳乎《げんこ》たる横顔に、古人が正義の姿にふさわしいものとした憤怒の表情と清廉の表情とを与えていた。
防寨《ぼうさい》のうちにいた者は皆駆けつけてき、少し遠巻きに居並んで、まさに起こらんとする事柄に対して一言をも発することができないように感じた。
ル・カブュクは取りひしがれて、もうのがれようともせず、ただ全身を震わしていた。アンジョーラは手を放して、時計を取り出した。
「気を落ちつけろ。」と彼は言った。「祈るか考えるかするがいい。一分間の猶予を与えてやる。」
「許して下さい!」と殺害者はつぶやいた。それから頭を下げて、舌の回らぬわめき声を立てた。
アンジョーラは時計を見つめていたが、一分間過ぎるとそれを内隠しに納めた。それから、わめきながらうずくまってるル・カブュクの頭髪をつかみ、その耳にピストルの先をあてがった。最も恐るべき暴挙のうちに平然と加入してきた多くの勇敢な人々も、顔をそむけた。
一発のピストルの音がして、殺害者は額から先に地面の上に倒れた。アンジョーラはすっくと背を伸ばし、信念のこもったいかめしい目つきであたりを見回した。
それから彼は死体を蹴《け》やって言った。
「そいつを外に投げすてろ。」
死にぎわの機械的な最後の痙攣《けいれん》でぴくぴくやってるみじめな男の身体を、三人の男が持ち上げて、小さな防寨《ぼうさい》からモンデトゥール街に投げすてた。
アンジョーラはじっと考え込んでいた。ある壮大な神秘な影が、彼の恐ろしい清朗さの上に静かにひろがっていった。突然彼は声を上げた。人々は静まり返った。
「諸君、」とアンジョーラは言った、「あの男がなしたことは憎むべきものである、僕がなしたことは恐るべきものである。彼は人を殺した、それゆえに僕は彼を殺した。反乱にも規律が必要であるから、僕はそ
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