諱B」とガヴローシュは叫んだ。
そして、行きかけて立ち止まった。
「ところで、俺《おれ》にあいつの銃をおくれよ。」そしてまた付け加えた。「奴《やっこ》さんの方は君にあげるが、俺は道具の方がほしいんだ。」
浮浪少年は挙手の礼をして、大きい方の防寨の切れ目を喜んで出て行った。
八 ル・カブュクと呼ばるる男に関する疑問
もし、ガヴローシュが出かけて行った後ほとんどすぐに起こった壮烈な恐ろしい一事件を、この概略な草案からはぶいたならば、われわれがここに試作してる悲壮な画面は不完全なものとなるだろう、そして、痙攣《けいれん》と努力とを交じえた社会的|産褥《さんじょく》と革命的|分娩《ぶんべん》との偉大な時間を、そのありのままの正確な浮き彫りで読者に見せることができないだろう。でわれわれはその一事をここに付加したい。
人の知るとおり、群集は雪達磨《ゆきだるま》のようなもので、転々しながらもしだいに多くの野次馬を巻き込むものである。それらの人々は互いにどこからきたかとも尋ね合わない。ところでアンジョーラとコンブフェールとクールフェーラックとに導かれた一群にも、途中から加わってきた多くの者があったが、そのうちに、肩のすれ切った人夫ふうな短上衣を着、盛んに身振りをし、声が太く、気の荒い酔っ払いみたいな顔つきをした、ひとりの男がいた。その男は、本名か綽名《あだな》かはわからないがル・カブュクと呼ばれていた。そしてまた、見覚えがあるようだと言ってる人たちも本当はまったく知らないのであって、ひどく酩酊《めいてい》してるのかまたはそのまねをしてるのかもわからなかった。彼は数人の者とともに、居酒屋の外に持ち出したテーブルにすわっていた。そして一座の者らに酒をすすめながら、防寨《ぼうさい》の奥にある大きな人家をながめてはしきりに考えてるらしかった。その六階建ての家は、街路をずっと見おろして、サン・ドゥニ街に正面を向けていた。すると突然彼は叫んだ。
「おい皆の者、あの家《うち》から射撃したらいいじゃねえか。あの窓に控えてりゃあ、だれも街路を進んでくることはできねえ。」
「うん、しかし家はしまってるからな。」と酒を飲んでた一人が言った。
「たたいてみようや。」
「たたいたってあけるものか。」
「では扉《とびら》をぶちこわすばかりだ。」
ル・カブュクは扉の所へ駆けて行って、そこ
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