「ち》で山出し女どもの中にひとりのヴィーナスを見いだした宦官《かんがん》の長のようでもあり、三文絵の中にラファエロの一枚を掘り出した美術愛好者のようでもあった。物をかぎ分ける本能も、物を考察する知力も、彼のうちのすべてが働いていた。ガヴローシュに一大事が起こったことは明らかだった。
 アンジョーラがやってきたのは、かく彼が最も考えあぐんでる時だった。
「お前は小さくて人目につかないから、」とアンジョーラは言った、「防寨《ぼうさい》から出て、人家に沿って忍んでゆき、方々を少し見回って、どんな様子だか僕に知らしてくれ。」
 ガヴローシュはすっくと身を伸ばした。
「小僧も何かの役には立つんだね。結構だ。行ってこよう。だがね、小僧に安心できても、大僧には安心できねえよ。」
 そしてガヴローシュは、頭を上げ声を低め、ビエット街ではいってきた男を指さしながら言い添えた。
「あの大僧がわかるかい。」
「それがどうした?」
「あいつは回し者だ。」
「確かか。」
「半月ほど前に、俺《おれ》がロアイヤル橋の欄干で涼んでると、耳をつかまえて引きおろした奴《やつ》だ。」
 アンジョーラはすぐに浮浪少年のもとを去り、向こうにいたひとりの酒樽人足《さかだるにんそく》にごく低く数語ささやいた。その労働者は室《へや》から出て行ったが、またすぐに三人の仲間をつれてはいってきた。そしてこの肩幅の広い四人の人夫は、ビエット街からきた男が肱《ひじ》でよりかかってるテーブルの後ろに、気づかれないようにそっと並んだ。彼らは明らかに今にもその男に飛びかかりそうな姿勢を取った。
 その時アンジョーラは、男に近づいていって尋ねた。
「君はだれだ?」
 その突然の問いに、男ははっとして顔を上げた。彼はアンジョーラの澄み切った瞳《ひとみ》の奥をのぞき込んで、その考えを読み取ったらしかった。そして世に最も人を見下げた力強い決然たる微笑を浮かべて、昂然《こうぜん》としたいかめしい調子で答えた。
「わかってる……そのとおりだ!」
「君は間諜《スパイ》なのか。」
「政府の役人だ。」
「名前は?」
「ジャヴェル。」
 アンジョーラは四人の者に合い図をした。するとたちまちのうちに、振り返る間もなくジャヴェルは、首筋をつかまれ、投げ倒され、縛り上げられ、身体を検査された。
 彼は二枚のガラスの間に糊付《のりづ》けにされた小さな丸いカ
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