sつやぎぬ》と
おお曙《あけぼの》と蒼天《あおぞら》とのその時代よ、
愛は楽しき隠語をささやきしその時代よ!
われらの庭はチューリップの一鉢《ひとはち》。
君は裳衣にて窓を隠しぬ。
素焼きの碗《わん》をわれは取り、
瀬戸の皿《さら》を君には与えぬ。
更にまたわれらが興ぜし大なる災い――
焼けし君がマッフ、失《な》くせし首巻き、
または夜食の料にとわれらが売りし
セークスピアの貴《とうと》き肖像よ!
われは乞《こ》い、君は豊かに与えぬ。
君が清き丸き腕《かいな》、われはそと脣《くち》づけぬ。
栗《くり》の実《み》を興がりて食せんためには
二折本のダンテを食卓とはなしぬ。
たのしき陋屋《ろうおく》のうちにてわが脣を
燃ゆる君が脣に始めて触れし時、
髪を乱し頬《ほお》を赤めて君去りし時、
色青ざめてわれはひとり、神を念じぬ。
君記憶すや、数限りなきわれらが幸《さち》を、
またついにはぼろとなりしかの襟巻《えりま》きを。
おおいかに多くの嘆息は、暗きわれらが心より
深き空の彼方《かなた》へと上りゆきたりけるよ!
[#ここで字下げ終わり]
その時、その場所、浮かびくる青春の思い出、空に輝きそめる二、三の星、人無き街路の寂寞《せきばく》たる静けさ、準備されている厳正なる事変の急迫、それらは、前に述べたとおり叙情詩人であるジャン・プルーヴェールが暗闇《くらやみ》の中で低唱する右の詩句に、一種悲痛な魅力を与えていた。
そのうちに、小さな防寨《ぼうさい》の中には豆ランプがともされ、大きな防寨の中には、四旬節祭前日にクールティーユへ行く仮面を積んだ馬車の前に見られるような蝋炬火《ろうたいまつ》が一本ともされた。それらの炬火は前に言ったとおりサン・タントアーヌ郭外からきたものである。
この炬火は、風に消されないように三方に舗石《しきいし》を立てた一種の籠《かご》の中に置かれて、その光はすべて旗の上に射《さ》すようになっていた。街路も防寨も闇の中に沈んでいて、この大きな龕灯《がんどう》で恐ろしく照らされた赤旗のほかは、何にも見えなかった。
その光は、一種言い知れぬすごい赤味を旗の紅色に添えていた。
七 ビエット街にて列に加わりし男
まったく夜になってしまったが、何事も起こってこなかった。ただ漠然《ばくぜん》たるどよめきが聞こえていて、また間を置いて小銃の
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