ヲた。火薬の小樽《こだる》は、扉《とびら》のそばの別のテーブルの上にのせて取って置かれた。
パリー中にひろがってゆく国民兵召集の太鼓は、なお絶えず続いていたが、ついにはただ単調な響きになってしまって、彼らの注意をもう少しもひかなかった。その響きはあるいは遠ざかり、あるいは近づいて、陰鬱《いんうつ》な波動をなしていた。
人々は皆いっしょになって、別に急ぎもせず荘重なまじめさで、小銃やカラビン銃に弾をこめた。アンジョーラは防寨《ぼうさい》の外に三人の哨兵《しょうへい》を出し、ひとりをシャンヴルリー街に、ひとりをプレーシュール街に、ひとりをプティート・トリュアンドリー街の角に置いた。
かく防寨を築き、部署を定め、銃には弾をこめ、見張りを出し、もはや人通りもない恐ろしい街路に残り、人の気配《けはい》もしない黙々たる死んだような人家に囲まれ、しだいに濃くなってゆく夕闇《ゆうやみ》のうちに包まれ、一種悲壮な恐ろしい気がこもっていて何かが進んでくるように思われる闇と沈黙とのうちにあって、孤立し武装し決意し落ち着いて、彼らは待ち受けた。
六 待つ間
戦いを待ってるその間、彼らは何をしたか?
これは歴史であるからして、われわれはそれを語らなければならない。
男らは弾薬を作り、女らは綿撒糸《めんざんし》をこしらえ、弾型に入れるためにとかす錫《すず》や鉛がいっぱいはいってる大きな鍋《なべ》は盛んな炉の火にかかって煙を出しており、見張りの者らは武器を腕にして防寨《ぼうさい》の上で番をし、他に心を散らさないアンジョーラは見張りの者らを監視していたが、その間に、コンブフェール、クールフェーラック、ジャン・プルーヴェール、フイイー、ボシュエ、ジョリー、バオレル、および他の数名の者らは、互いに学生間でむだ話にふける平常の時のように、いっしょに寄り集まり、窖《あなぐら》と変化した居酒屋の片すみ、築かれた角面堡《かくめんほう》から二、三歩の所で、装薬し実弾をこめたカラビン銃を椅子《いす》の背に立てかけて、愉快なる青年らではないか、危急のまぎわにありながら恋の詩を吟じ始めた。
その詩は次のとおりであった。
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君記憶すやわれらの楽しき生を、
うら若きふたりにてありける頃、
また心にいだく望みと言わば
美服と愛とのみなりける頃を!
君が年齢《とし》わが年
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