モ》はとやかく店を続けていた。料理は悪くなってとても食えないほどになり、もとから悪かった酒はなおひどいものになった。それでもクールフェーラックとその仲間は、なおコラント亭から足を絶たなかった。「お慈悲に行ってやるんだ、」とボシュエは言っていた。
 寡婦のユシュルーは、息切れがし、ぶかっこうで、田舎《いなか》の思い出話をいつも持ち出した。そしてその変な言葉で彼らの退屈をいくらかまぎらしてやった。彼女には田舎の陽気な思い出話に味を添える独特な言葉使いがあった。「山※[#「木+査」、第3水準1−85−84]《さんざし》の中に駒鳥《こまどり》の鳴く」のを聞くのが昔は一番楽しみだったと、彼女はよく言っていた。
「レストーラン」になってる二階の広間は、大きな長めの室《へや》で、いろんな種類の腰掛けや椅子《いす》やテーブルやまた跛《びっこ》の古い球突台が一つ据えてあった。螺旋形《らせんけい》の階段を下から上ってゆくと、室の片すみにある船の甲板の出入り口のような四角な穴に出るのだった。
 その室は、ただ一つの狭い窓から明りが取られ、いつもランプが一つともされていて、ちょうど屋根裏みたいだった。四本足のすべての家具は、三本足で立ってるようにがたがたしていた。石灰で白く塗った壁の装飾としては、ユシュルー上《かみ》さんにささげられた次の四句のみだった。

[#ここから4字下げ]
十歩にして人は驚き、二歩にして人は慴《おび》ゆ。
一つの疣《いぼ》ありてその蛮勇なる鼻に蹲《うずくま》る。
絶えまなく人は恐る、その鼻汁の飛沫《ひまつ》を、
また他日口の中にその鼻の陥るべきを。
[#ここで字下げ終わり]

 それは木炭で壁に書きつけてあった。
 まったく右の詩とそっくりなユシュルー上さんは、落ち着き払ってこの四句の前を、朝から晩まで歩き回っていた。マトロート([#ここから割り注]魚料理[#ここで割り注終わり])にジブロット([#ここから割り注]肉料理[#ここで割り注終わり])という名だけで知られてるふたりの女中が、ユシュルー上さんを助けて、青葡萄酒《あおぶどうしゅ》[#ルビの「あおぶどうしゅ」は底本では「あをぶどうしゅ」]の壜《びん》や、瀬戸の皿に入れて空腹な客に出す種々な薄ソップなどを、テーブルの上に並べた。マトロートは肥った、丸々した、顔の赤い騒々しい女で、故ユシュルーの気に入りだったが、神
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