ッ、自分の皮膚をいためる木をも感ぜず、顳※[#「需+頁」、第3水準1−94−6]《こめかみ》に激しく脈打っている熱をも感ぜず、身動きもせず、倒れんばかりになって、絶望の立像かと思われるほどだった。
彼は長い間そうしていた。あたかも深淵《しんえん》の中に永遠に立ちつくしてるがようだった。がついに彼はふり向いた。やさしい悲しい押さえつけたような小さな音が後ろに聞こえたのである。
コゼットがすすり泣いてるのだった。
彼女はもう二時間以上も前から、夢想してるマリユスのそばで涙を流していたのである。
彼は彼女のそばに寄り、ひざまずき、そして静かに身を伏せて、長衣の下から出てる彼女の足先を取り、それに脣《くちびる》をつけた。
彼女は黙ったまま彼のなすに任した。うち沈み忍従してる女神のように、女には愛の宗教を受け入れる瞬間があるものである。
「泣かないでね。」と彼は言った。
彼女はつぶやいた。
「私はたいてい行かなければならないし、それにあなたは来ることができないとすれば!」
彼は言った。
「私を愛してくれる?」
彼女は涙の中から来る時最も魅惑的になる楽園の言葉を、すすり泣きながら答えた。
「心から慕ってるの。」
彼は言葉につくし難い愛撫《あいぶ》の調子で言った。
「泣いちゃいや。ねえ、私のためにどうか泣かないでね。」
「あなたは私を愛して下すって?」と彼女は言った。
彼は彼女の手を取った。
「コゼット、私はだれにもまだ誓いの言葉を言ったことはない。誓いの言葉は恐ろしいから。私はいつも父が自分のそばに立ってるような気がする。でも私は今一番神聖な誓いの言葉をあなたに言おう。ねえ、あなたが私のもとを去れば、私は死んでしまう。」
彼がその言葉を発した調子のうちには、きわめて荘重な静粛な憂愁がこもっていて、コゼットは身をおののかした。悲痛な真実なものが通りかかる時に与える一種の冷気を、彼女は感じた。そしてその感動を受けて泣くのをやめた。
「あのね、」と彼は言った、「明日《あした》は私を待たないんだよ。」
「なぜ?」
「明後日《あさって》でなければこないつもりでね。」
「まあ、なぜ?」
「あとでわかるよ。」
「一日あなたに会わずに! いえそんなことできないわ。」
「あるいは一生のためになることだから、一日くらい耐《こら》えていよう。」
そしてマリユスは、半ば口の中で
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