チた暖炉のまわりに丸くすわり、青い覆《おお》いをしたランプの光にほのかに照らされ、きびしい顔つきをし、灰色かまたは白い頭髪をし、寂しい色しかわからない時勢おくれの長い上衣を着、長い間を置いては時々堂々たるまたきびしい言葉を発しながら、みなそこに集まっている時、小さなマリユスはびっくりした目で彼女らをながめて、婦人というよりもむしろ古代の長老や道士を見るような気がし、実在の人物というよりもむしろ幽霊を見るような気がした。
 それらの幽霊に交じってまた、その古い客間には常客たる数人の牧師がおり、それから数人の貴族らがいた。ベリー夫人の第一秘書役たるサスネー侯爵、シャール・ザントアンヌという匿名で単韻の短詩を出版したヴァロリー子爵、金の綯総《よりふさ》のついた緋《ひ》ビロードの服をつけ首筋を露《あら》わにしてこの暗黒界を脅かしてるきれいな才ばしった妻を持ち、かなり若いのに胡麻塩《ごましお》の頭を持っていたボーフルモン侯、最もよく「適宜な礼儀」を心得ていたフランス中での男たるコリオリ・デスピヌーズ侯爵、愛嬌《あいきょう》のある頤《あご》をした好人物アマンドル伯爵、王の書斎と言われてるルーヴルの
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