ナある。
ブールボン家復帰の記念謝恩日に、タレーラン([#ここから割り注]訳者注 革命、帝政、王政復古、と順次に節を曲げし政治家[#ここで割り注終わり])が通るのを見て彼は言った。「彼処《あそこ》に魔王閣下が行く[#「に魔王閣下が行く」に傍点]。」
ジルノルマン氏はいつも自分の娘と小さな少年とを連れてきた。娘というのはあの永遠の令嬢で、当時四十歳を越していたが、見たところは五十歳くらいに思われた。少年の方は、六歳の美しい児で、色が白く血色がよく生々《いきいき》としていて、疑心のない幸福そうな目つきをしていた。しかし彼がその客間に現われると、いつもまわりで種々なことを言われた。「きれいな子だ!」「惜しいものだ!」「かわいそうに!」この子供は前にちょっと述べておいたあの少年である。人々は彼のことを「あわれな子」と呼んでいた。なぜなら彼の父は「ロアールの無頼漢」([#ここから割り注]訳者注 ナポレオン旗下の軍人[#ここで割り注終わり])のひとりだったからである。
そのロアールの無頼漢は、既に述べておいたジルノルマン氏の婿《むこ》で、彼が「家の恥[#「家の恥」に傍点]」と呼んでいた人であ
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