闥刻Iわり])。下女の方は皆ニコレットという名前をもらっていた。(後に出てくるマニョンという女もそうであった。)ある日、門番に見るような背《せ》の高いつんとしたすてきな料理女が彼の家にやってきた。ジルノルマン氏は尋ねた。「給金は月にいくらほしいんだ。」「三十フランです。」「何という名前だ。」「オランピーと申します。」「よろしい五十フランあげよう、そしてニコレットという名前にしたがいい。」

     六 マニョンとそのふたりの子供

 ジルノルマン氏においては、心痛は憤怒となって現われた。彼は絶望すると狂猛になった。彼はあらゆる偏見を持っていて、あらゆるわがままを行なった。彼の外部の特徴を形造っていたものの一つで、また彼の内心の満足であったところのものは、前に指摘しておいたとおり、老いても血気盛んだということで、是非ともそういうふうに装うということだった。彼はそれを「りっぱな評判」を得ることと称していた。りっぱな評判は彼に時とすると、不思議な意外な獲物をもたらすことがあった。ある日、相当な産着《うぶぎ》にくるまれ泣き叫んでる生まれたばかりの大きな男の児が牡蠣籠《かきかご》みたいな籠の中
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