フも関係も持たなかった。皆赤貧の部類に属する者たちだった。赤貧の階級は、まず困窮な下層市民から初まり、困苦から困苦へとしだいに社会のどん底の方へ沈んでゆき、物質的文明の末端である二つのものとなってしまうのである。すなわち、泥を掃き除ける溝渫《どぶさら》い人と、ぼろを集める屑屋《くずや》とである。
ジャン・ヴァルジャンのいた頃の「借家主」の婆さんはもう死んでいて、後《あと》にはそれとちょうど同じような婆さんがきていた。だれかある哲学者が言ったことがある、「婆というものは決してなくならないものだ。」
この新たにきた婆さんは、ビュルゴン夫人と言って、その生涯に重立ったことと言っては、ただ三羽の鸚鵡《おうむ》を飼ったくらいのもので、それらの鸚鵡が三代順次に彼女の心に君臨したのである。
その破屋《あばらや》に住んでいた人々のうちで最も惨《みじ》めなのは、四人の一家族だった。父と母ともうかなり大きなふたりの娘とで、前に述べておいたあの屋根部屋の一つに、四人いっしょになって住んでいた。
その一家族は、極端に貧窮であるというほかには、一見したところ別に変わった点もないようだった。父親は室《へや
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