へや》の中を歩き回っていた。
しばらく沈黙の後、彼は女房の方へ近寄って、その前に立ち止まり、前の時のように両腕を組んだ。
「も一ついいことを聞かしてやろうか。」
「何だね。」と彼女は尋ねた。
彼は低い短い声で答えた。
「金蔵《かねぐら》ができたんだ。」
女房は「気が違ったんじゃないかしら」というような目つきで、じっと彼をながめた。
彼は続けて言った。
「畜生! 今まで長い間というもの、火がありゃ腹がへるしパンがありゃ凍えるってわけだった。もう貧乏は飽き飽きだ。俺《おれ》もみんなも首が回らなかったんだ。笑い事じゃねえ、冗談じゃねえ、くそおもしろくもねえや、狂言もおやめだ。へった腹にかき込んで、かわいた喉《のど》につぎ込むんだ。食い散らして眠って何にもしねえ。そろそろこちらの番になってきたんだ。くたばる前に一度は金持ちにもならなけりゃあね!」
彼は室《へや》をぐるりと一回りしてつけ加えた。
「ほかの奴《やつ》らのようにね。」
「いったい何のことだよ?」と女房は尋ねた。
彼は頭を振り、目をまばたき、何か述べ立てようとする大道香具師《だいどうやし》のように声を高めた。
「何のことか
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