手紙がはいっていた。
 それぞれあて名がついていた。
 四つともひどい煙草《たばこ》のにおいがしていた。
 第一の手紙のあて名はこうだった。「下院前の広場[#「下院前の広場」に傍点]……番地[#「番地」に傍点]、グリュシュレー侯爵夫人閣下[#「グリュシュレー侯爵夫人閣下」に傍点]。」
 中にはおそらく何か所要の手掛かりがあるかも知れない、その上手紙は開いているので読んでも一向さしつかえないだろう、とマリユスは考えた。
 手紙の文句は次のとおりだった。

[#ここから4字下げ]
侯爵夫人閣下
[#ここから2字下げ]
 寛容と憐愍《れんびん》との徳は社会をいっそう密接に結び合わせしむるものに御座|候《そうろう》。公正のために身をささげ正法の聖なる主旨に愛着して身をささげ、その主旨を擁護せんがために、血潮を流し財産その他いっさいを犠牲に供し、しかも今や落魄《らくはく》の極にあるこの不幸なるスペイン人の上に、願わくは閣下のキリスト教徒たる感情を向けたまい、慈悲の一瞥《いちべつ》を投ぜられんことを。全身負傷を被り居る教育あり名誉あるこの軍人をして、なおそのあわれなる生を続けしめんがために、閣下は
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