個人は消滅するが、その種族は存続する。
 彼らは常に同じ能力を持っている。乞食《こじき》から浮浪人に至るまで、種族はその純一性を保っている。彼らはポケットの中の金入れを察知し、内隠しの中の時計をかぎつける。金や銀は彼らに一種のにおいを放つ。また盗まれたそうな様子をしている人のいい市民もいる。そういう市民を彼らは根気よくつけ回す。外国人や田舎者《いなかもの》が通るのを見れば、彼らは蜘蛛《くも》のように身を震わす。
 ま夜中の頃、人なき街路で、彼らに出会いまたはその影を見る時、人は慄然《りつぜん》とする。彼らは人間とは思われない。生ある靄《もや》でできてるかのような姿をしている。あたかも彼らは常に闇《やみ》と一体をなしており、やみと見分けがつかず、影以外に何らの魂をも持たないかのようである。そして彼らが夜陰から脱け出してくるのはただ一瞬時の間のみであって、しばし恐るべき生命に生きんがためのみであるかのように思われる。
 そういう悪鬼を消散させんには、何が必要であるか。光明である。漲溢《ちょういつ》せる光明である。曙《あけぼの》の光に対抗し得る蝙蝠《こうもり》は一つもない。どん底から社会を
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