の下に、進歩と理想郷とのその広大なる地下の血脈系の下に、はるか地下深くに、マラーより下、バブーフより下、更に下、はるか遠く下に、上方の段階とは何らの関係もない所に、最後の坑道がある。恐るべき場所である。われわれが奈落《ならく》と呼んだのはすなわちそれである。それは暗黒の墓穴であり、盲目の洞穴である。どん底[#「どん底」に傍点]である。
 そこは地獄と通じている。

     二 どん底

 このどん底においては無私は消滅する。悪魔は漠然《ばくぜん》と姿を現わし、人は自己のことのみを考えている。盲目の自我が、咆《ほ》え、漁《あさ》り、模索し、かみつく。社会のウゴリノがこの深淵《しんえん》のうちにおる([#ここから割り注]訳者注 ウゴリノとは飢の塔のうちに幽閉されて餓死せる子供らの頭を咬める人――ダンテの神曲[#ここで割り注終わり])。
 その墓穴の中にさまよってる荒々しい人影は、ほとんど獣類ともまたは幽鬼とも称すべきものであって、世の進歩なるものを念頭にかけず、思想をも文字をも知らず、ただおのれ一個の欲望の満足をしか計っていない。彼らはほとんど何らの自覚も持たず、心の中には一種の恐るべき
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