助けた。しかし憤激を除いては、後はやはり元と同じだった。彼の意見はただ和らげられたというのみで、少しも変わりはなかった。更によく言えば、彼はもう意見などというものを持たず、ただ同感をのみ持っていた。いかなる党派かといえば、彼は人類派だった。そして人類のうちではフランスを選び、国民のうちでは民衆を選び、民衆のうちでは婦人を選んだ。彼の憐憫《れんびん》が特に向けられたのはその点へであった。今や彼は事実よりも思想を好み、英雄よりも詩人を好み、マレンゴーのような事件よりもヨブ記のような書物をいっそう賛美した。それからまた、一日の瞑想の後、夕方並み木通りを帰って来る時、そして樹木の枝の間から、底なき空間を、言い難き光輝を、深淵《しんえん》を、影を、神秘をながむる時、単に人類にのみかかわることはすべてきわめて微小であるように彼には思えた。
人生の真に、そして人類の哲理の真に、ついに到達したと彼は思っていた。おそらく実際到達していたであろう。そして今やもうほとんど天をしかながめなくなった。実に天こそは、真理がその井戸の底からながめ得る唯一のものである。
それでもなお彼は、未来に対する計画考案組立
前へ
次へ
全512ページ中258ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング