フラン。全部で六百五十フランを出なかった。そして手元に五十フラン残った。彼は豊かであった。場合によっては十フランくらいは友人に貸してやった。クールフェーラックは一度六十フランも借りたことがあった。火については、暖炉がなかったのでマリユスはそれを「簡便に」しておいた。
マリユスはいつも二そろいの衣服を持っていた。一つは古くて「平素《ふだん》のため」のであり、一つは新しくて特別の場合のためのであった。両方とも黒だった。またシャツは三つきりなかった、一つは身につけ、一つは戸棚に入れて置き、も一つは洗たく屋にいっていた。損《いた》むにつれてまた新しくこしらえた。しかし普通いつも破けていたので、頤《あご》の所まで上衣のボタンをかけていた。
マリユスがそういう立身をするまでには、幾年かの月日を要した。それはきびしい年月で、過ぎるに困難な年であり、よじのぼるに困難な年であった。しかしマリユスは一日たりとも意気|沮喪《そそう》しなかった。彼は困苦ならばすべてを受け入れ、負債を除いてはあらゆることをなした。自分は何人《なんぴと》にも一文の負債《おいめ》もないと、彼は自ら公言していた。彼に言わすれば、
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