っていた、「うまく成功した絞首台だ。」彷徨《ほうこう》者で、賭博《とばく》者で、放蕩《ほうとう》者で、たいてい酔っ払ってる彼は、絶えず次のような歌を歌って、仲間の若い夢想家らに不快を与えていた。「若い娘がかわいいよ[#「若い娘がかわいいよ」に傍点]、よい葡萄酒がかわいいよ[#「よい葡萄酒がかわいいよ」に傍点]。」節《ふし》は「アンリ四世万々歳」の歌と同じだった。
それにこの懐疑家は、一つの狂的信仰を有していた。それは観念でもなく、教理でもなく、芸術でもなく、学問でもなかった。それはひとりの人間で、しかもアンジョーラであった。グランテールはアンジョーラを賛美し、愛し、尊んでいた。この無政府的懐疑家が、それら絶対的精神者の一群の中にあって、だれに結びついたかというに、その最も絶対的なるものにであった。いかにしてアンジョーラは彼を征服したか。思想をもってか。否。性格をもってである。これはしばしば見られる現象である。信仰者に懐疑家が結びつくということは、補色の法則の示すとおり至って普通なことである。われわれに欠けているものはわれわれを引きつける。盲人ほど日の光を愛するものはない。侏儒《しゅじ
前へ
次へ
全512ページ中182ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング