「はロルボアーズで降りたかな。またはパッシーまできたかな。そして左へ曲がってエヴルーの方へ行ったか、右へ曲がってラローシュ・ギーヨンの方へ行ったかな。追っかけようたってだめだし、お人よしの伯母へは、さて何と書いてやったものだろう。」
 その時上部の室から降りる黒いズボンが、前部の室《へや》のガラス戸から見えた。
「マリユスかしら?」と中尉は言った。
 それはマリユスだった。
 馬車の下には、馬や御者などの間に交じって、小さな田舎娘《いなかむすめ》が旅客に花を売っていた。「おみやげの花はいかが、」と彼女は呼んでいた。
 マリユスはそれに近寄って、平籠《ひらかご》の中の一番美しい花を買った。
「なるほど、」と前の部屋《へや》から飛び降りながらテオデュールは言った、「これはおもしろくなってきた。どんな女にあの花を持ってってやるのかな。あんなきれいな花を持ってゆくくらいだから、よほどの別嬪《べっぴん》に違いない。ひとつ見てやろう。」
 そしてもう今度は、言いつかったためではなく、自分の好奇心からして、あたかも自ら好きで狩りをする犬のように、彼はマリユスのあとをつけはじめた。
 マリユスはテオデ
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