ホくぜん》とした欲望にとらわれた。
 平素の落ち着きにもかかわらず、多少不安なその好奇心をまぎらすために、彼女は自分の技芸のうちに逃げ込んで刺繍《ししゅう》を初めた。それは車の輪がたくさんにある帝政および復古時代の刺繍の一つで、綿布の上に綿糸でなすのだった。退屈な仕事に頑固《がんこ》な女工という形である。そうして彼女は幾時間もの間|椅子《いす》にすわりきりでいた。すると扉《とびら》が開いた。ジルノルマン嬢は顔を上げた。中尉のテオデュールが前に立っていて、軍隊式の礼をしていた。彼女は喜びの声を上げた。お婆さんであり、似而非貞女《えせていじょ》であり、信者であり、伯母《おば》であっても、自分の室《へや》に一人の槍騎兵《そうきへい》がはいって来るのを見ては、うれしからざるを得ないわけである。
「まあ、テオデュール!」と彼女は叫んだ。
「ちょっと通りかかりましたので。」
「まあ初めに……。」
「ええ今!」とテオデュールは言った。
 そして彼は伯母を抱擁した。ジルノルマン伯母は机の所へ行って、その抽出《ひきだ》しをあけた。
「少なくも一週間くらいは泊まってゆくんでしょうね。」
「いえ、今晩帰りま
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