った。霰弾《さんだん》は火炎をもって応戦された。
荒廃したその翼部のうちに、鉄格子のついた窓をとおして、煉瓦《れんが》造りの本館のこわれた室々がのぞき見られる。イギリスの近衛兵はそれらの室に潜んでいた。螺旋形《らせんがた》の階段は一階から屋根下まですっかり亀裂《きれつ》して、こわれた貝殻の内部のような観を呈している。階段は二連になっている。階段のうちに包囲されて上連に追いつめられたイギリス兵は、下連の階段を切り落としてしまった。蕁麻《いらくさ》のうちに堆《うずたか》くなってる青い大きな板石がそのなごりである。十段ばかりはまだ壁についている。第一段の上には三叉《みつまた》の矛《ほこ》の形が刻まれている。登ることのできないそれらの階段はなお承口《うけぐち》のうちに丈夫についている。他の部分はちょうど歯のぬけた顎《あご》のようなありさまをしている。二本の古木がそこに立っている。一本は枯れてしまっている。一本は根もとに傷を受けながら、四月にまた青い芽を出す。一八一五年から再び階段の中に伸び初めたのである。
両軍は礼拝堂の中でも互いに殺戮《さつりく》し合った。今は再び静かになってるその内部は
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