分の名を名乗ると、もう床《とこ》について眠ってることがよくある門番は、起きてきて、顔をよく見定めて、それから鍵《かぎ》で門を開いてくれた。そして墓掘り人は出られたが、十五フランの罰金を払わねばならなかった。
このヴォージラールの墓地は、規則外のその特殊な点で、取り締まり上の統一を乱していた。そして一八三〇年後、間もなく廃せられてしまった。東の墓地といわれるモンパルナスの墓地がそのあとを継いで、それからまたその墓地に半ば属していた有名な居酒屋をも承《う》け継いだ。その居酒屋の上には木瓜《ぼけ》の実を描いた板が出ていて、ボン[#「ボン」に傍点]・コアン屋[#「コアン屋」に傍点](上等木瓜屋)という看板で、酒場の食卓と墓石との間を仕切っていた。
ヴォージラールの墓地は、しおれた墓地ともいえるような趣があって、もう衰微していた。苔《こけ》がいっぱいはえて、花はなくなっていた。中流人はそこに埋めらるることをあまり好まなかった。貧民のような気がしたからである。ペール・ラシェーズの墓地の方は上等だった。ペール・ラシェーズに埋まることは、マホガニーの道具を備えるようなもので、高雅に思われたのである
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