割り注終わり])。十と九つは大事件の合い図だった。大事件というのは壁の門[#「壁の門」に傍点]の開くことであって、その鋲《びょう》のいっぱいついた恐ろしい鉄の扉《とびら》は大司教の前にしか決して開かれなかったのである。
 大司教と庭番とのほかは、前に言ったとおり、男はだれも修道院の内部にははいられなかった。けれど寄宿生らはその他に二人の男を見たことがあった。一人はバネス師という年老いた醜い教誨師《きょうかいし》であって、それを皆は会堂の歌唱の間《ま》で格子《こうし》越しに見ることを許されていた。も一人は図画の教師のアンシオー氏で、前に数行引用した一寄宿生の手紙の中ではアンシオ[#「アンシオ」に傍点]氏と呼ばれていて、恐ろしい[#「恐ろしい」に傍点]佝僂《せむし》の老人[#「の老人」に傍点]だと書かれている。
 男の人選がすべていかにうまく行なわれてるかは、これでわかるであろう。
 そういうのがこの不思議な家のありさまであった。

     八 心の次に石

 精神的の方面を大略述べた後に、その物質的方面の象《すがた》を少しく指摘することはむだではないだろう。また既に読者にはそれが多少わ
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