ろかった。巣にかかった蠅《はえ》の飛ぶのを見て喜ぶ蜘蛛《くも》のような目つきで、また捕えた鼠《ねずみ》を走らして喜ぶ猫《ねこ》のような目つきで、彼は獲物をうかがっていた。獲物をつかむ爪牙《そうが》は奇怪な快感を持っている。それはつかんだ獲物の盲目的な運動を感ずることである。そのなぶり殺しはいかにおもしろいことであるか!
ジャヴェルは楽しんでいた。網の目は堅固に結んであった。彼は成功を信じていた。今はもう手を握りしめることだけであった。
彼の方には大丈夫な手下がついているので、ジャン・ヴァルジャンがいかに勇気あり力あり死にもの狂いになったとて、抵抗しようなどとは思いもよらぬことだった。
ジャヴェルは徐々に進んで行った。あたかも盗人のポケットを一々探るように、その街路のすみずみを隈《くま》なく探りながら進んだ。
ところがその蜘蛛《くも》の巣のまんなかまで行くと、そこにはもう蠅《はえ》はかかっていなかった。
彼の憤激は察するに余りある。
彼はドロア・ムュール街とピクプュス小路との角《かど》を番していた警官に尋ねてみた。警官は泰然自若としてその場所に立っていたが、あの男が通るのは見
前へ
次へ
全571ページ中368ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング