衣をぬいでいたが、ひどく寒いとも感じてはいなかったのである。
しかるに、そういう瞑想《めいそう》にふけっているうちに、少し前から変な物音が彼の耳に達していた。ちょうど鈴を振ってるような音だった。それが庭の中に聞こえていた。弱くはあるが、はっきりと聞き取れた。夜牧場で家畜の首についてる鈴から起こるかすかな小音楽にも似寄っていた。
その音をきいて、ジャン・ヴァルジャンはふり返った。
よく見ると、庭の中にだれか人がいた。
一人の男らしい人影が、瓜畑《うりばたけ》の幾つもの鐘形覆《しょうけいおお》いの間を、規則正しく立ち上がったりかがんだり立ち止まったりして歩いていた。ちょうど何かを地面に引きずってるかまたはひろげてるようだった。その男は跛者《びっこ》らしかった。
ジャン・ヴァルジャンは身を震わした。不運な者らが絶えずやるような身震いであった。すべてに敵意がありすべてが疑わしいように彼らは思うものである。人の目につきやすいからといっては昼間をきらい、不意に襲われやすいからといっては夜をきらうのである。ジャン・ヴァルジャンは、先刻は庭に人影のないのを見ておののき、今は庭にだれかいるのを
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