越えて、その壁を有名になし恐ろしくなしたあの技能である。
ジャン・ヴァルジャンは菩提樹《ぼだいじゅ》の枝がさし出てる壁の高さを目分量で計った。約十八尺ばかりの高さだった。その壁が大きな長屋の建物の切阿《きりづま》と出会ってる角の所には、下の方に三角形の大きな築塀《ついべい》がついていた。おそらくその至って便利な引っ込んだ場所に、いわゆる通行人と称する用便人らを立たせないためのものであったらしい。そういうふうに壁のすみをふさいだものはパリーにいくらもあった。
その築塀は高さ五尺ばかりだった。その頂から壁の上までよじ上るべき場所は、十四尺に満たないほどだった。
壁の上には平たい石があるのみで、何の覆《おお》いもついていなかった。
ただ困まるのはコゼットだった。コゼットの方は壁を乗り越すことができなかった。では彼女を捨ててしまうか? ジャン・ヴァルジャンはそんなことは夢にも考えなかった。といって連れてのぼることは不可能だった。その異常な登攀《とうはん》をやるには自分一人で全力をつくさなければならなかった。少しの荷があっても、重力の中心を失って下に落ちるにきまっていた。
そこで一筋の
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