男で、長い褐色のフロックを着て、丸い帽子をかぶり、手には太い杖を持っていた。その大きな身体と大きな拳《こぶし》とは、暗やみの中のすごい歩き方とともに気味悪いものであった。四個の怪物が市人に化けたようなありさまだった。
 彼らは四つ辻のまんなかに立ち止まって、何か相談するように一群になった。決心のつかぬ様子をしていた。彼らの首領とも思える一人の男がふり返って、ジャン・ヴァルジャンがはいりこんだ方向を右手で強くさし示した。も一人の男は頑強《がんきょう》に反対の方向をさし示したらしかった。第一の男が向き直った瞬間に、月の光がその顔をすっかり照らし出した。ジャン・ヴァルジャンは十分にジャヴェルの顔を認めた。

     二 幸運なるオーステルリッツ橋の荷車

 ジャン・ヴァルジャンにとっては、もはや疑う余地はなかった。しかし幸いにも四人の男の方にはまだ疑念があった。彼は四人が躊躇《ちゅうちょ》してるのを利用した。彼らには損失の時間だったが、彼には儲《もう》けの時間だった。彼は潜んでいた戸口から出て、ポスト街を植物園の方へ進んでいった。コゼットは疲れてきた。彼はコゼットを両腕にとり上げて、抱いて
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