入れた。彼はそれで安心を覚え、あたかも実際に死んだような平和を覚えた。
 テナルディエ夫婦の爪牙《そうが》からコゼットを救い出した日の夕方、ジャン・ヴァルジャンは再びパリーにはいった。夕暮れの頃コゼットとともにモンソーの市門からはいった。その市門の所で幌馬車《ほろばしゃ》に乗り、天文台の前の広場まで行った。そこで馬車をおりて、御者に金を払い、コゼットの手を引いて、二人で暗夜の中をウールシーヌとグラシエールの両郭に隣している人気のない街路を通って、オピタル大通りの方へ進んで行った。
 コゼットにとっては、その日は感動の多い異様な一日であった。寂しい飲食店で買ったパンとチーズとを籬《まがき》の影で食べたこともあった。たびたび馬車を代えたり、しばらくは徒歩で行ったりした。彼女は少しも不平をこぼさなかった。けれどもだいぶ疲れていた。歩きながらしだいに彼女が手を引っぱるようになるので、ジャン・ヴァルジャンもそれに気がついた。彼はコゼットを背中におぶった。コゼットは人形のカトリーヌを手に持ったまま、頭をジャン・ヴァルジャンの肩につけて、そのまま眠ってしまった。
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   第四編 ゴル
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