かったのである。
コゼットはもだえて暖炉のすみに縮こまり、半ば露わな小さな手足を引っ込めて隠そうとした。上さんは鞭の手を上げた。
「ちょっと、お上さん。」と男は言った。「先ほどその娘さんの胸掛けのポケットから何か落ちてころがってきましたよ。たぶんそれじゃありませんか。」
と同時に彼は身をかがめて、床《ゆか》の上をさがすようなふうをした。
「それ、ここにありました。」と彼は身を起こしながら言った。
そして彼は一片の銀貨を上さんに差し出した。
「そう、これです。」と彼女は言った。
実はそれではなかったのである。それは二十スー銀貨だった。けれども上さんはそれで得《とく》をすると思った。彼女は銀貨をポケットに入れて、ただ恐ろしい目つきを娘の上に投げて言った。「またこんなことをすると承知しないよ。」
コゼットは、上さんのいわゆる「彼女の巣」の中に戻った。そして見知らないその旅客をじっと見つめた彼女の大きい目には、これまでかつてなかったような表情が浮かんできた。それはまだ無邪気な驚きの情にすぎなかったが、あっけにとられた一種の信頼の情が交じっていた。
「ところで、夕御飯はどうします。」と
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