きなどは、ノルマンディーの古い伝説にアルーと呼ばれてる廃墟《はいきょ》に住む薄暮の悪鬼を思わせるのだった。
ある種の夜の水鳥は、沼地の中でそのような姿をしていることがある。
もしその夜の靄《もや》をじっと透かし見たならば、ニヴェルの大道の上にモン・サン・ジャンからブレーヌ・ラルーへ行く道の角の所に立ってる一軒の破屋《あばらや》のうしろに隠れたようにして、瀝青《チャン》を塗った柳編みの屋根のついてる一種の従軍行商人の小さな車のようなものが止まっていて、轡《くつわ》をつけたまま蕁麻《いらくさ》を食ってる飢えたやせ馬がそれにつけられていて、その車の中には、そこに積んである箱や包みの上にすわっている女らしい人影があるのが、はるかに認め得られたであろう。おそらくその車と平野を徘徊《はいかい》してるあの男との間には、何かの関係があったかも知れない。
夜は澄み渡っていた。中天には一片の雲もない。地上は血潮で赤く染んでいようとも、関せず焉《えん》として月は白く澄んでいる。空の無関心がそこにある。平野のうちには、霰弾《さんだん》のために折られた樹木の枝がただ皮だけでぶら下がっていて、夜風に静かにゆ
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