その兵士は叫んだ、「あの人が死んだと[#「あの人が死んだと」に傍点]! 君はいったい[#「君はいったい」に傍点]、あの人をよく知ってるか[#「あの人をよく知ってるか」に傍点]?」人々の想像は転覆された彼を神に祭り上げていた。ヨーロッパの奥底はワーテルローの後に暗黒になった。ナポレオンの消滅によって、ある巨大な空虚が長く残されたのである。
諸国王らはその空虚の中に身を据えた。旧ヨーロッパはその機に乗じて復古した。神聖同盟《サント・アリアンス》は作られた。しかしワーテルローの災なる戦場はそれに先立ってベル・アリアンスと叫んだではないか([#ここから割り注]訳者注 ワーテルローの一地名であるが、またその文字は美しき同盟という意味を有する[#ここで割り注終わり])。
この建て直されたる旧ヨーロッパに対峙《たいじ》し対抗して、一つの新しきフランスのひな形は描かれた。皇帝によって嘲弄《ちょうろう》された未来は現出しきたった。それは額《ひたい》に自由という星をつけていた。新しき時代の熱烈な目はその方へ向けられた。ただ不思議なことには、人々はその未来なる「自由」と、その過去なるナポレオンとに、同時
前へ
次へ
全571ページ中114ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング