はどうしてよろしいかわからないのです。」
「私もそういう時のことを考えました。」
「どうも仕方がありません。あきらめるよりほかはありません。」と院長は言った。
この会話は、司教邸の一階の回廊食堂でなされたのであった。
司教はちょっと黙っていたが、それから突然、院長の方をふり向いた。
「院長さん、」と彼は言った、「この室だけでどれだけ寝台が置けましょうか。」
「閣下のこの食堂にですか。」と院長は呆気《あっけ》にとられて叫んだ。
司教は室を見回して、目で尺度をはかり、計算をしているらしかった。
「二十は置けるだろう!」と彼はひとりごとのように言って、それから声を高めた。「院長さん、少し申し上げたいことがあります。明らかにまちがったことがあるのです。あなたの方は、五つか六つの小さな室に二十六人はいっています。私の方は三人きりですが、六十人くらいははいれる家にいます。それがまちがっているのです。あなたが私の家に住み、私があなたの家に住みましょう。私にあなたの家をあけていただきましょう。あなたの家はここです。」
その翌日、二十六人の貧しい人々は司教邸に移され、司教は施療院の方へ移った。
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