た。その幻想が引き続くにつれて、この種の幻惑の特質たる特殊な働きの一つによって、司教の姿はしだいに大きくなって彼の目に輝き渡り、ジャン・ヴァルジャンの姿は、しだいに小さくなって消えていった。やがてそれは一つの影にすぎなくなり、忽然《こつぜん》と消え失《う》せた。そして司教一人|後《あと》に残った。
 その姿は、この惨《みじ》めなる者の魂をすみずみまで燦然《さんぜん》たる光明をもって満たした。
 ジャン・ヴァルジャンは長い間泣いた。女よりも弱々しく小児よりもおびえて、熱い涙を流して咽《むせ》び泣いた。
 泣いている間に、彼の脳裏にはしだいに明るみがさしてきた。異常なる明るみ、喜ばしいしかも同時に恐ろしい明るみであった。彼の過去の生涯、彼の最初の過《あやま》ち、彼の長い贖罪《しょくざい》、彼の外部の愚鈍、彼の内部の冷酷、あれほど多くの復讐《ふくしゅう》の計画をもって楽しんだ彼の釈放、司教の家で彼に起こったこと、彼がなした最後の一事、少年から四十スーを盗んだこと、司教の仁恕の後に行なわれただけにいっそう卑劣でいっそう凶悪であったその罪、すべてそれらのことが、明らかに、かつてなかったほどの明る
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